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zoom RSS ☆「グラン・トリノ」メモ

<<   作成日時 : 2009/05/17 17:49   >>

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GRAN TORINO
製作年度/ 2008年
製作国/ アメリカ
上映時間/ 117分
監督/ クリント・イーストウッド
製作/ ロバート・ローレンツ,ビル・ガーバー
原作/ デイブ・ヨハンソン,ニック・シェンク
脚本/ ニック・シェンク
音楽/ カイル・イーストウッド,マイケル・スティーヴンス
出演/ クリント・イーストウッド,ビー・ヴァン,アーニー・ハー,クリストファー・カーリー,コリー・ハードリクト,ブライアン・ヘイリー,ブライアン・ホウ,ジェラルディン・ヒューズ,ドリーマ・ウォーカー
【映画館】
++++++++++
最新のクリント・イーストウッド監督作品.前作「チェンジリング」が2月に公開されたばかりですが,この「グラン・トリノ」は4月末から公開が開始された作品です.ちなみに,タイトルの“グラン・トリノ”とは,1970年代初めに製造されたフォード社製のスポーティ・カーの名称です.

主人公ウォルト・コワルスキーの妻の葬儀風景から物語りは始まる.
クローズアップされたウォルトの顔は,悲しみを湛えるどころか,とても葬式の最中とは思えないほど苦々しい.眉間にしわを寄せ,子どもや孫たちを睨みつけている.
もうすぐ80歳になるウォルト.額の深い皺,奥歯を噛みしめてぐっと固く結んだ口元は頑固さが滲み出ている.一方,ウォルトの視線の先の子供や孫は頑固な年寄りに辟易している様子.

ウォルトは,朝鮮戦争に出兵し,退役後,定年まで自動車工として働いたことを誇りにしている.しかし,その後の時間が長すぎた.彼にとって今の世の中は不満だらけ.子供たちのこと,年長者に敬意を払わない若者たちのこと,自分が住む町に有色人種が溢れていること,などなど.彼は,辺りかまわず不満の対象を罵り,唾を吐く始末.
芝生を刈り,愛車をきれいに磨いた後は,昼間から缶ビールを飲む毎日.そばに寝そべる愛犬デイジーに愚痴をこぼしながら,愛車“グラン・トリノ”を眺める以外にすることがない.妻を失った今,彼は孤独な時間を埋める術を知らなかった.

彼の家の隣にはモン族の一家が住んでいた.モン族は,ベトナム戦争で米軍に加担してラオス高原の住処を失い,アメリカに逃れてきた民族.その一家は,母親と娘と息子,それからウォルトと同年代の老婆の四人暮らし.娘は利発で如才ないタイプだったが,息子のタオは学校にも行かず,いつも一人ぼっちの無口な青年だった.
ある日,不良グループのメンバーである従兄弟に,タオはウォルトの愛車を盗むように命令される.夜中,仕方なくウォルトの家に忍び込んだタオだったが,ウォルトに見つかりライフルを向けられると,一目散で逃げ出した.ウォルトは,翌日やってきて,タオに焼きを入れようとした不良グループにも容赦なくライフルを突き付けた.それは,彼らが自分の庭に侵入したためだったが,タオを不良グループから救うかたちとなる.数日後,スーと母親はウォルトを訪ねて,タオを何かに使ってほしいと頼み込む.渋々と引き受けたウォルトとタオの不思議な交流が始まるのですが・・・

「ミリオンダラー・ベイビー」以来,4年ぶりにクリント・イーストウッドが出演した作品.自分自身の最後の主演作と位置づけ,かなり好き勝手に作っている.ロン・ハワードから譲り受けた「チェンジリング」があったから,思い切り良く作れたのかもしれない.イーストウッドの遊び心と想いが作品全体に詰まっている.物語は取り立てて面白いとは思わないが,演出とか仕掛けとか,あるいは俳優クリント・イーストウッドの存在がとても面白い.顔中皺くしゃになり,ちょっと足もとが頼りなかったりするものの,周囲を見回す立ち姿や太陽を眩しそうに見つめる眼差しなど相変わらず格好良い.

この作品でのイーストウッドの役どころは,頑固で,協調性がなく,子供や孫たちに疎まれている偏屈な老人.その上,気に入らないと罵声を浴びせ,必要ならば銃を抜く.人種差別もかなりなもので有色人種が大嫌い.腹が立ち,思わず絶句したときにはガルルルッと唸る始末.かと思えば,妻を亡くし周りを見渡すと,彼には心地よい居場所がない.時折見せるやるせなさが痛々しい.

そんなウォルトがタオやモン族との交流により,徐々に変化していく様子を,皮肉とユーモアたっぷりのエピソードを通して描いている.しかし,ホーム・ドラマ仕立てながらも,9.11以降のアメリカが抱える問題を意識せずにはいられない作品に仕上げられていた.
硫黄島二部作は9.11以降のアメリカの風潮に対する批判が色濃く出ていたが,本作では,さらに昇華させて,異文化に接することの面白さ,難しさ,そして理解しようとする寛大さを示唆しているところが印象深い.また,短絡的な人間を助長し,じっくりと話し合う時間を妨害する銃社会を手厳しく批判していた.

しかし,物語をとおして社会問題を示唆しているとはいえ,最近のクリント・イーストウッド作品がホーム・ドラマのまま終わると思ったのは,実に我ながら浅はかだった.終盤,ウォルトの行為が,短絡的であった故に徒となる.急転直下,その後の展開はとても重い.監督クリント・イーストウッドの術中に見事に嵌った.
物語は容赦なくウォルトを責め立てながらラストへと向かう.画面全体がウォルトの後悔の念で充満したのち,俳優クリント・イーストウッドのフィナーレ.西部劇のガンマンとして,刑事アクション映画の主役として活躍したイーストウッドの最後に相応しいラスト.自分の役者として演じてきたキャラクターを否定しつつ,それでも愛着は捨て切れない想いがとても良く伝わってくる見事な演出だった.今後,名場面の一つになるのかもしれませんね.

この映画は脚本をまったくいじらずに撮影した,とクリント・イーストウッドはインタビューに答えています.しかし,脚本を書いたニック・シェンクは,クリント・イーストウッドの手により完成した作品を観て,自分の当初のイメージとのギャップに驚いたのではないでしょうか.ふと,そんなことを感じた作品だったかなっ・・・

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監督:クリント・イーストウッド(最高っす) 出演:クリント・イーストウッド(最高っす)ビー・ヴァン アーニー・ハー  出演:クリストファー・カーリー ブライアン・ヘイリー ブライアン・ホウ  ...続きを見る
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2009/09/27 19:06

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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
TBありがとうございます。

>周囲を見回す立ち姿や太陽を眩しそうに見つめる眼差しなど相変わらず格好良い.

この映画が最後の主演作になりそうなのは残念ですね。
他の人の作品にカメオ出演でもいいので出てもらいたいものです。
きぐるまん
2009/05/18 07:43
あっ、ご覧になりましたね。
そうそう、ラストはイーストウッドだから決まっていますし、納得できるんですよね。
って、遺作みたいですねど (^^;;
今度はDVDでゆっくりと見直してみたいと思います。
タラララ
2009/05/18 15:54
僕のイーストウッドの印象は「喰えないおやじ」です。脚本をいじらなかったとすれば当て書きのような遺書でした。

戸田先生の「◎◎せにゃ」にちょっと萎え。
HOSHIO
2009/05/18 22:19
きぐるまんさん
>この映画が最後の主演作になりそうなのは残念ですね。
80歳近くの人間を主人公にして,なおかつ格好良い役回りは,なかなか無いですからね.
しかし,本人に気があれば,カメオあるいは助演はありえるのではないでしょうか(・・?)
しゅー
2009/05/19 09:17
タラララさん
>そうそう、ラストはイーストウッドだから決まっていますし・・・
この作品は,セルフ・パロディ的な要素もありますし,クリント・イーストウッドの役者および監督としての実績を踏まえて鑑賞する作品だと思いました.
ラストも,ある程度,クリント・イーストウッドを知っているからこそ,惹きつけられたのだと思います.
しゅー
2009/05/19 09:29
HOSHIOさん
えっとー,“当て書き”って何ですか・・・ポリポリ(^^);

>脚本をいじらなかった・・・
確かに,脚本に出てくる主人公の年齢,物語の構成要素に惚れ込んだのでしょう.
しかし,脚本を変えずに,演出で自分のイメージをどこまで表現できるか・・・遊びながら作品を作ったのではないかと,邪推しています・・・(^o^)
しゅー
2009/05/19 09:42
“当て書き”って、俳優のイメージを優先させて書かれた脚本じゃないですかね。
普通だと脚本のイメージに合った俳優を起用するのですが、その逆みたいな感じでしょうか。
確かに「グラン・トリノ」はイーストウッドが主演することを前提で書かれたようにしか思えません。
えっ〜、以上は一般的な“当て書き”ですが、HOSHIOさんはプロなので、ひょっとするとプロは別の意味で使っているのかも知れません (^^;;
タラララ
2009/05/20 13:58
タラララさん
“当て書き”とは,そういう意味でしたか・・・どうも,ありがとうございました!!

>「グラン・トリノ」はイーストウッドが主演することを前提・・・
主演だけでなく,彼が監督する作品としても打って付けでしたね・・・(^o^)
しゅー
2009/05/20 22:41
テレビの連続ドラマは完全に「当て書き」ですね。映画でも織田裕二なんかは脚本ができる前にキャスティングされてることもあると思いますよ。

>HOSHIOさんはプロなので

映画は全然知りませんがな。(^^;)
HOSHIO
2009/05/21 21:48
しゅーさん おはようさんです
見てきましたよ〜 インフルエンザ真っ最中に!(笑)
空気のきれいなウィルスウォッシャーの映画館でしたけど
空いていました!! 今はどこも空いていますね

ラストのイーストウッド自身の歌がこれまた良いですね〜
この年に爺さん!! かっこいいです〜
主演作がこれで最後だとは寂しいですが・・皆さんが言われるようにイーストウッドが主演するように書かれた作品だと思いますね
とても良くできた脚本ですよね 

アメリカも日本も今不景気で なにが大事かわからなくて不安になってる時に見る映画としても良いかも?
テス(nosaman)
2009/05/22 08:57
HOSHIOさん
>テレビの連続ドラマは完全に「当て書き」ですね。
映画でもシリーズものは,当然,当て書きになりますね!!
それ以外でも,何で読んだかは忘れましたが・・・
川端康成原作の「美しさと哀しみと」(たぶん)は,加賀まり子ありきで作られたものだったみたいです・・・まさに当て書きですね!!

>HOSHIOさんはプロなので・・・
良い響きです.自分は自分の分野で,おそらく,プロと呼べる領域に到達することはないだろうと思われます.風呂で我慢することにします・・・
しゅー
2009/05/22 09:27
テスさん,お久しぶりです.
>見てきましたよ〜 インフルエンザ真っ最中に!(笑)
関東も,来週はインフルエンザで関西と同じ状態になっているかもしれませんね.
少しでもお客が入るように,半額セールを映画館で実施してくれると個人的にはありがたいのですが・・・

>この年に爺さん!! かっこいいです〜
そうですよね.80歳近くなるのにあの格好よさはずるいです.
もし,自分が80まで生きたとして・・・クリント・イーストウッドの1割でも格好よさを身につけていれたら良いなーと思いました.ウォルトはちょっと疑問ですが,イーストウッドは自分の今後の一つの理想形ですね・・・
しゅー
2009/05/22 09:41

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