☆「博士の愛した数式」メモ

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製作年度/ 2005年
製作国/ 日本
上映時間/ 117分
監督/ 小泉堯史
製作総指揮/ -
原作/ 小川洋子
脚本/ 小泉堯史
音楽/ 加古隆
出演/ 寺尾聰 、深津絵里 、齋藤隆成 、吉岡秀隆 、浅丘ルリ子
【DVD】
++++++++++
第一回本屋大賞,第55回読売文学賞を受賞した小川洋子の同名小説を映画化したもの.
“記憶障害”,“数学者”という,最近,他の作品でも取り上げられる題材を扱った作品です.

ある中学校で,新しいクラスを教えることになった若い数学教師.あだ名はルート.髪の毛がルート記号√のように跳ね上がっています.
ルート先生は,自分の最初の授業で,生徒たちに自己紹介を兼ねて自分のあだ名の由来や子供の頃に体験したエピソードを絡ませて“数学というもの”について語りはじめました.
彼の母親は,シングルマザーで,家政婦の仕事をしながら彼を育ててくれたそうです.
彼が数学教師になったのは,母親がある数学者の世話をすることになり,彼もその数学者に出会ったことがキッカケでした.彼はその数学者を博士と呼んでいました.
博士は,以前に起こした交通事故が原因で,80分しか記憶を保持できません.そういう状況にあっても,ひたむきに数学と向き合っていたようです.
そんな博士とのエピソードを交えながら,素数,友愛数,階乗,完全数などの数の性質について説明するとともに,人の感性と数との関わりについての授業が行われました・・・

80分の記憶.失われる記憶を補うためにメモを貼り付けた背広をいつも着ている博士.
連続した時間の中では,ある程度,失われた記憶を補間しながら過ごせるものの,睡眠により時間が分断されると全ての出来事がリセットされてしまう.
ルート先生の母親が家政婦として博士の家で働き始めたばかりの前半は,博士の不思議な台詞と行動が中心に話が進みます.「数と愛を交わす」という博士の言葉には驚きですが,それほど博士は数学が好きなようです.数学(数式)を愛し,数学の完璧な美しさに惹かれ,それを追求する.不完全な自分の存在を冷静に受け止め,どんなに辛くても,前向きに生きようとする.

博士の数学は,初めて会う人との挨拶として数学の話をするくらい,生活の中に溶け込んでいました.ルート先生の想い出の中に出てくる数学もそんな博士のたしなみとしての数学です.
数に纏わるはなしやオイラーの公式についてのはなし.
友愛数,完全数といった数の性質はこの映画ではじめて知りました.博士自身の気持ちの変化を,オイラーの公式で説明されるところでは,首をかしげながらも何となく納得.

「博士の愛した数式」は非常のオーソドックスに作られた作品.
斬新さはあまり感じられませんが,落ち着いた美しい映像と音楽が印象的です.
博士とルート親子のいくつものエピソードの合間に挿入される日本の春から初夏にかけての美しい景色.桜,タンポポそして小川のせせらぎなど,春の風物詩の描写は素晴らしい.
各エピソードの丁寧なつくりも印象に残ります.
多少,型にはまったところが気になりましたが,これまでの巨匠たちが築き上げてきた日本映画の伝統を重んじ,派手さはないものの,ひとつの映画スタイルとして完成度の高い作品ではないでしょうか.

博士役の寺尾聰は,朴訥とした人柄,思い込みの強さ,そして頑固なところをユーモラスに演じていました.若い頃はそうでもなかったのに,だんだん宇野重吉に似てきたように感じます.
この映画は,博士とルート親子とのエピソードを中心に据えた作品.
その母親役を演じたのは深津絵里.この作品での彼女は溌剌としていて,非常にさわやかな感じが好印象.
そこに,博士の義姉役の浅丘ルリ子が絡んできます.ルート親子と博士が楽しんでいる様子をずっと見つめる姿は妖艶でミステリアス.彼女のルート先生の母親への嫉妬が映画全体に緊張感を与えていました.
そして,ルート先生役は吉岡秀隆.どんはキャラにでも何となく合わせてしまう,つかみどころのない不思議な俳優です.

この映画では数学者にスポットが当てられていましたが,数学者に限らず学者と呼ばれる人は,自分の研究対象をこよなく愛し,こだわり,探求心が衰えることのない人なのでしょうね.そんな人たちの姿を,ちょっとだけ垣間見た気分になれる,後味の良い作品でした・・・

博士の愛した数式@映画生活

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この記事へのコメント

2006年08月07日 00:04
こんばんは。
ご覧になったのですね。(^^*)

私もツタヤさんでどうしようかと悩みながら、
まだ保留にしています。
なんとなくそうなるんじゃないかと思いましたが、
やはり映像と音楽はしっとりしていい感じだったんですね。

原作に思い入れのある映画は
あまり観たくはないのですが、
これと「間宮兄弟」は観てみようかな・・。
(*'‐'*)

しゅー
2006年08月07日 01:14
>原作に思い入れのある・・・
映画は大人になったルートくんの回想形式になっています.
それに映画としては美しいのですが,数式の美しさをじゅうぶん伝えている作品ではありません.
原作は未読なので,はっきりしたことは言えませんが,原作と映画はかなり異なっているのではないでしょうか.
原作に思い入れが深いとすると・・・同名でも別物として鑑賞するのが良いかもしれませんねっ!
タラララ
2006年08月07日 11:46
自分も面白そうだけど、「私の頭の中の消しゴム」や「メメント」と似ているような気がして、どうしようかと思ってました。
数学の話は難しそうですし、「オイラーの公式」と言われても、おいらには意味不明です (^^;;
今度、レンタルで借りてみることにしますね。
本当に最近の寺尾聰は、だんだんとお父さんに似てきましたね (^^)
タ~コ
2006年08月07日 13:01
小説が良かったので、ことのさん同様、見るのを考えてます。
でも、見たい割合のが多いですw

会社が変わってから、社内DVDが見れなくなったので、
映画鑑賞がめっきり減ってしまいました。
すごく寂しいです(ToT)
みのり
2006年08月07日 15:00
80分の記憶って、微妙ですね。 80分あればかなり色々なことが出来そうなのに、そのことを覚えていられないのは寂しいですし、覚えていることと忘れていることがある(数学のことは忘れていないのですか?)というのも不思議ですね。
しゅー
2006年08月08日 01:05
タラララさん,こんばんは
>本当に最近の寺尾聰は、だんだんとお父さんに似てきましたね
「亡国のイージス」ではあまり感じなかったのですが,この映画では宇野重吉とダブりました♪

>“おいら”の公式・・・
ファイマンという物理学者が「数学史上最も素晴らしい公式であり,我々の至宝である.」と言ったことで有名な公式です.
この映画で出てくる数の性質(定義)がオイラーの公式を説明するための伏線になっていて,知らない人でもなんとなく判る構成になっていました.
もっとも,数学についてあまり造詣が深くないせいか,私はこの式の持つの美しさを理解できませんでした(^^);
言葉で式を説明すると,ガウス平面上の円が記述できる公式です.この式を用いると三角関数がi&eで表すことができます.交流電流や振動問題などでも活躍しています.
eiθ=cosθ+isinθ
映画ではθ=πを代入してeiπ = -1の形で登場します.
しゅー
2006年08月08日 01:17
タ~コさん,お久しぶりです♪
>会社が変わってから、社内DVDが見れなくなった・・・
う~ん,それが普通の職場環境!
以前のタ~コさんが表現していた“うさぎ小屋”(違っていたらごめんちゃい)は,非常に羨ましい職場だったのですよっ~うんうん(^o^)

>小説が良かったので・・・
タ~コさんも読まれているのですか!
第一回本屋大賞を受賞するほどの小説ですから,さぞかし素敵な小説だったのでしょうね(^o^)
しゅー
2006年08月08日 01:28
みのりさん,こんばんは!
>数学のことは忘れていないのですか?
事故を起こすまえの記憶はすべて保持されています.
また,その後も,ノート等に記録して失われる記憶を補間していました.
ですから,数学についての研究は,全てをノートに記録して,それを読み直すことにより前進させているのではないでしょうか(・・?)
もちろん,普通の状態に比べて,何倍も時間が必要になると思われますが・・・
タラララ
2006年08月10日 01:44
>eiθ=cosθ+isinθ
>映画ではθ=πを代入してeiπ = -1の形で登場します
え~っと、これは宇宙人の使う暗号でしょうか (・_・?)
とても自分と同じ人間の考えたものとは思えません (+_+)
この映画、見るのはやめようかな…。
しゅー
2006年08月10日 12:42
タラララさん,こんにちは
>この映画、見るのはやめようかな…。
おやおやっ.
どうも“数式”がネックのような・・・
この映画のタイトルは「博士の愛した家政婦さん」だと思ってご覧下さい♪
2006年08月14日 23:42
こんばんは。
ここにコメントして良かったのかどうか
わかりませんが・・

今は蓼科ですか?
しゅーさんも、怒ることがあるんですね。
(^^*)
「気ままにひとり言」楽しみに拝見しています。

そうそう、
「ダヴィンチコード」の時に見つけた
HOSHIOさんのブログも最近お気に入りで
時々のぞいています。
数式の話は、タラララさんと同じで、
お二人を地球人ではないのでは・・
と思っています。
(-^〇^-)



しゅー
2006年08月15日 10:14
ことのさん,こんにちは.
はい,こんな感じでコメントしてもらえるとうれしいです♪
記事のコメントが,よりバラエティーに富む内容になったら,楽しいな~と思っています(^o^)

>しゅーさんも、怒ることがあるんですね。
あの~,宇宙人ではないのでしっかり怒りますよ~♪
うちの息子に対しては,父親の義務として叱っています.
叱るのって,結講,しんどいな~と思いながら・・・(^^);

蓼科へは週末に行きます!
nanika
2007年01月08日 01:32
今更ですが、最近この映画と原作に興味を持ちました。
取り敢えず、原作本のほうを読んでみようかと思っています(BookOffで見つけたら・・・)。
しゅー
2007年01月08日 13:06
nanikaさん,お久しぶりです♪
映画の方は,あくまでも数学者の話であって,数学(数式)は枝葉です.
なので,nanikaさん向きではないかもっ(・・?)
原作本のほうは,詠んでないので判りません・・・

今年もヨロシクお願いします(^o^)
マダオ
2008年02月14日 13:12
昨日見て、ちょっと幸せな気持ちになる作品でした。
しゅー
2008年02月14日 17:42
マダオさん,はじめまして&ようこそ!
>昨日見て、ちょっと幸せな気持ちになる作品でした。
しっとりとした作品でした.
深津絵里さんが清清しかったです♪

マダオさんのおうちはどちらですか・・・もし,よろしければ!!

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