☆「スラムドッグ$ミリオネア」メモ

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SLUMDOG MILLIONAIRE
製作年度/ 2008年
製作国/ イギリス,アメリカ
上映時間/ 120分
監督/ ダニー・ボイル
製作総指揮/ ポール・スミス ,テッサ・ロス
原作/ ヴィカス・スワラップ
脚本/ サイモン・ボーフォイ
音楽/ A・R・ラーマン
出演/ デヴ・パテル,マドゥル・ミッタル,フリーダ・ピント,アニル・カプール,イルファン・カーン,アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール,アズルディン・モハメド・イスマイル,ルビーナ・アリ
【映画館】
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映画のタイトルにもなっているように,日本でも“ファイナル・アンサー”が流行語となったクイズ番組“クイズ$ミリオネア”を題材にした映画.個人的には,TV番組を題材にしたような作品には興味がないため,アカデミー賞を受賞していなければ,見向きもしなかったはずの作品です.

舞台はインド最大の都市ムンバイ(かつてのボンベイ).
イギリス発祥で,世界的に人気のあるクイズ番組“WHO WANTS TO BE A MILLIONAIRE?(クイズ$ミリオネア)”は,インドでも絶大な人気を誇っていた.

物語は,コールセンターでお茶くみとして働く青年ジャマールがクイズ番組に出演し,あと1問正解を出せば,番組史上最高の賞金2000万ルピー(およそ4000万円)を手にできるところからはじまる.これまでにも多くの人が挑戦してなし得なかった快挙.しかし,その日の放送はそこで終了.最後の問題は翌日の同じ時間に持ち越されることになった.
ジャマールは,ムンバイのスラム街で育ち,学校へ通ったことがない無学の青年.彼の快挙に疑惑を持った司会者が警察に通報し,彼は詐欺容疑で逮捕される.彼は,その夜,取調室で警官に拷問を受けながらも,詐欺などしていない,と主張する.翌日,上司である警部が現れて,クイズ番組の録画を再生させながら,尋問をはじめた.画面には,彼を軽んじる司会者とおどおどしながら問題の解答を口にするジャマールの姿があった.ジャマールは,おもむろに正解に至った自分の過去を語りはじめる.

彼の母親は,彼が幼いとき,兄サリームと彼の目の前で,イスラム教の暴徒により殺された.母親を失った兄弟は同じような境遇の女の子ラティカに出会う.サリーム,ジャマールそしてラティカのムンバイのかわいい三銃士が結成された.しかし,それは長くは続かず,その後,兄弟二人だけで各地を転々とする.あるときは盗みを働き,またあるときは観光ガイドの真似事をして,何とか生き延びてきた.そんな日々での様々な体験はクイズの正解に繋がっていた.そして,ラティカとの再会が彼のささやかな夢なのですが・・・

インドの作家ヴィカス・スワラップの小説「ぼくと1ルピーの神様」をもとに,「フル・モンティ」のサイモン・ビューフォイが脚本を書き,「トレインスポッティング」「28日後...」などで知られる監督ダニー・ボイルがムンバイの活力を吸収しながら完成させた作品だった.

およそ11億人にも及ぶ人口,100近くの言語が存在し,多数の宗教が混在する.宗教間のトラブルが多発し,貧富の差,身分制度などの問題も抱えるインド.しかし,その一方で,BRICsの一国として,IT関連などのハイテク分野を中心に目覚しい経済発展を見せている.そんなインドのエキゾチックな雰囲気と躍動感を盛り込み,ハリウッドに新風を注ぎ込んだ作品.特に大作ではないものの,インドでロケした映像がとても生きいきとしている.最近のハリウッド映画に多用されるCGには感じられない生命力と疾走感に溢れていた.「踊るマハラジャ」で有名なA・R・ラーマンの音楽が更なる活気を生み出していた.

混沌とした中にエネルギー溢れるムンバイのスラム街をとても良く描き出している.臨場感やスピード感を生み出すカメラワークが心地良い.雑踏に際立つ色使いが美しい.ムンバイの路地で遊ぶ子供たちが,粗末な家が立ち並ぶ狭い路地を走り抜けるとき,カメラは足元や子供たちの目線で人々の暮らしの一瞬を切り取る.そしてカメラが上昇すると,今度はあたり一面に続く赤茶色の屋根群を俯瞰する.

貧しいながらも,スラム街で元気良く生きる子供たちの腕白ぶりが微笑ましい.また,ジャマールとラティカの友情と愛情が交じり合う恋愛がとてもキラキラと輝いていた.生きることに必死な彼らにとって恋愛は人生のすべてではない.それでも,二人の想いは,過酷な現状の中にあって希望として存在していた.

主演は無名の新人デヴ・パテル.主人公,スラムの負け犬ジャマールにお誂え向きの風貌と雰囲気を持っていた.一方,彼が再会を夢見た成長したラティカを演じたのは,インドのフリーダ・ピントという知性派タイプのモデル出身の女優だった.

とてもよく練られた,時間と空間を縦横無尽に行き来する,それでいてとても判りやすい構成,粋なストーリー展開.伏線の張り方が上手い.それを見事に映像化したダニー・ボイルの確かな技術と心憎い演出が冴えていた.また,全てを映像で見せる工夫,子供時代から青年へと成長を違和感なく一気に見せる工夫も素晴らしい.

インドが抱える様々な社会問題もしっかりと表現されているものの,それを深めることなく,所々にユーモアを散りばめ,夢のある娯楽に徹した作品でした.劇場未公開になったかもしれない小さな作品が,アカデミー賞に辿り着いたことにも夢を感じる作品だったかなっ・・・

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この記事へのコメント

HOSHIO
2009年05月07日 01:36
ダニー・ボイルの映像センスに一票、です。特に子供時代が素晴らしい。肥溜めのシーンもよかったなぁ・・・

でもいちばん好きなのは犬の向こうにガキどもが逃げるショット。あれはほんとに強烈な印象を残しました。

そういう、ハッとするカットがふんだんに散りばめられていて冒頭30分だけでも見る価値ありました。他の監督が同じホンで撮ってもこうはならなかったでしょう。

エンドロールはご愛敬。
タラララ
2009年05月07日 16:53
結局、GW中には見に行けませんでした (T_T)
このままDVD待ちになるかも…。
しゅー
2009年05月08日 06:36
HOSHIOさん
>肥溜めのシーンもよかったなぁ・・・
今にも匂ってきそうでしたね~(^o^)

エンドロールも好きですし,ライフラインのエピソードも好きでした!!

>他の監督が同じホンで撮ってもこうはならなかったでしょう。
ムンバイの雰囲気に監督自身が魅せられて,アイディアが溢れ出したという印象を受ける映像でした(^^)v
しゅー
2009年05月08日 06:39
タラララさん
>このままDVD待ちになるかも…。
ここ数年見てきた映画の中では,かなり気に入った作品でした(^^)v
決してスケールの大きな作品ではありませんが,劇場で見る価値がある作品だと思います.
今からでも遅くないですよっ!!
ryoko
2009年05月09日 16:14
しゅーさん、はじめまして。
TBありがとうございました。
そんなに知ってる問題ばっかり出ないぞとへそ曲がりなことを思いながらも、躍動感あふれる展開と、過酷な環境にもめげず逞しく生きる兄弟姿に元気をもらいました。
しゅー
2009年05月09日 22:33
ryokoさん,はじめまして&ようこそ!!
>そんなに知ってる問題ばっかり出ないぞ・・・
ごもっとも.そんな可能性は万に一つもないでしょう・・・だから映画なのだと思います.
シリアスな作品には厳しく,コミカルな作品にはとても甘い管理人です・・・(^o^)
2009年05月12日 22:11
お久しぶりですー!
私もコレは久々劇場で観ました!!

よかったですよね~列車の横で黄色の服を着て見上げるラティカが鮮明にまぶたに焼き付いてます。
インドを舞台という異色の映画ながら、
疾走シーン、トイレネタとダニーボイル色も散りばめられてましたね(笑)
幼少期のラティカの服からダンスシーンの旗?布?まで、
”黄色”が印象的な映画だったんですが、
なんですかねー?インドでも特別な色なんでしょうかね??
しゅー
2009年05月12日 23:29
やんやんさん
>列車の横で黄色の服を着て見上げるラティカ・・・
このシーンのラティカが一番きれいでしたねっ!!

>トイレネタ・・・
あの臭ってきそうなシーンは,ピーナッツバターとチョコレートのようです(^o^)

>インドでも特別な色なんでしょうかね??
どうなんでしょう.監督の好みの色なのではないでしょうか.トイレネタも同系の色ですし・・・(・・?)
2009年05月13日 21:03
ピーナツバターとチョコレートですか!
だったら子供も落ちても大丈夫、ですね♪

調べてみましたよー色の事!
インドでは、黄色は勇気と犠牲、それからヒンズー教の色だそうです。
多少意味も関係あるのかも知れませんね(^^)
しゅー
2009年05月13日 21:47
やんやんさん
>黄色は勇気と犠牲、それからヒンズー教の色だそうです。
インドの黄色にはそんな意味があったのですか.ちっとも知りませんでした.ひとつ勉強になりましたっ(^o^)
勇気と犠牲の色が見つかったとすると・・・あとは運命と恋愛の色ですねっ!!

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