☆「英国王のスピーチ」メモ

画像

THE KING'S SPEECH
製作年度/ 2010年
製作国/ イギリス,オーストラリア
上映時間/ 118分
監督/ トム・フーバー
製作総指揮/ ジェフリー・ラッシュ,ティム・スミス,ポール・ブレット,マーク・フォリーニョ,ハーヴェイ・ワインスタイン,ボブ・ワインスタイン
原作/ -
脚本/ デヴィッド・サイドラー
音楽/ アレクサンドル・デスプラ
出演/ コリン・ファース,ジェフリー・ラッシュ,ヘレナ・ボナム=カーター,ガイ・ピアース,ティモシー・スポール,デレク・ジャコビ,ジェニファー・イーリー,マイケル・ガンボン
【映画館】
++++++++++
第83回アカデミー賞で,12部門にノミネートされ,作品賞,監督賞,主演男優賞,脚本賞など7部門受賞した作品.東日本大震災以降,最初に劇場鑑賞した作品です.

1925年に開催された万国博覧会の閉会式.
英国王ジョージ5世の次男ヨーク公アルバート王子は国王代理として演説を行うが,その演説を途中で辞めてしまった.閉会式に集まった人々は眉をしかめるものの,誰ひとりその失態を非難しない.無様さにやり切れない思いで一杯のアルバート.けれども彼には自身の吃音をどうすることも出来なかった.
彼は,幼い頃から吃音を抱え,国王の次男という華々しい生い立ちながら,人前に出ることをとても嫌っていた.何とか吃音を直そうと,何人もの言語聴覚士の治療を受けるが一向に改善しない.もう治らないものとほとんど諦めかけていた.

ある日,ヨーク公の妻エリザベスは彼に内緒で,本職は舞台俳優ながら言語治療を行っているオーストラリア人ライオネル・ローグを訪ねる.彼の治療方法は,当時,認知されたものではなかったが,後遺症に苦しむ兵士たちの間で成果を挙げていた.ライオネルは自分のオフィスで行うこと等を条件に治療を引き受ける.診察室では私たちは平等だと宣言しヨーク公を愛称で呼んだ.さらに,吃音は心の問題だと考えるライオネルは,プライベートについての無遠慮は質問をぶつけた.怒ったヨーク公は,その後,彼の診察室へ行かなくなってしまう.

1936年,国王ジョージ5世が亡くなり,長男のウィンザー公エドワード王子がエドワード8世として国王に即位.ところが,即位後間もなく,かねてから離婚歴のあるアメリカ人ウォリス・シンプソンと交際していたエドワード8世が,彼女との愛を選択し退位してしまう.その結果,ヨーク公が余儀なく国王ジョージ6世として即位.けれども,吃音で王位継承評議会のスピーチを満足に出来ずに泣き崩れるヨーク公.その様子を見守る妻エリザベス妃.二人は,今一度,ライオネルの力に賭けることにする.そして,翌年に行われたウェストミンスター寺院での戴冠式はライオネルの指導により何とか乗り切ることに成功した.
1939年,ドイツがポーランドに侵攻し,英国はドイツに宣戦布告.ジョージ6世は,ナチス・ドイツとの開戦に揺れる国民の心を一つにするために決死のスピーチに挑むのですが・・・

二人の男の友情を軸にした人間味溢れるヒューマン・ドラマ.ジョージ6世の苦痛をしっかりと伝えつつも,ユーモアを交えた,とても暖かい感じがする作品だった.同じアカデミー賞候補として話題を二分した,刺激的ではあるものの何気なく観ていると置いていかれてしまう「ソーシャル・ネットワーク」とは対照的に,普通に楽しめるオーソドックスな作り.

本作の見どころは,物語もさることながら,ジョージ6世を演じたコリン・ファースと言語治療士ライオネル・ローグを演じたジェフリー・ラッシュ,この二人の見応えある演技.コリン・ファースは,ジョージ6世の吃音であることの苦しさ,悔しさそしてもどかしさを演じつつ,その合間にはユーモア感を,一方,ジェフリー・ラッシュは,ジョージ6世の治療を通しての苦労,友情,喜びを味のある演技で楽しませてくれた.
そんな二人の関係を飽きさせることなく,じっくりと見せる監督の手腕も見逃せない.また,中盤で,ライオネルがジョージ6世の戴冠式のために,急遽,呼ばれる際,彼がウェストミンスター寺院の中を足早に移動する姿を俯瞰するシーンを挿入することで,それなりに華やかさも醸し出していた.

“王冠を賭けた恋”と呼ばれるエドワード8世とシンプソン夫人との禁断の恋はあまりにも有名なエピソード.それゆえ,エドワード8世については若い頃からある程度知っていた.当時は彼に拍手喝采したものだが,自分の中で,この世紀のラブ・ロマンスはすっかり埃を被っていた.この映画ではエドワード8世を身勝手な人物として描いていた.しかし,別の機会にエピソードを思い出したとしても,年を重ねたせいか,やはり自分は彼の身勝手さを強く感じたに違いない.一方,ヨーク公ことジョージ6世については,彼が吃音であったこと,王位に就くことに対する苦痛はおろか,エドワード8世の次に即位したのは,彼の娘であるエリザベス二世と勘違いするほど知らない存在だった.

普通の人間なら自分に適した仕事を探せば良いのだが,王家に生まれたジョージ6世の場合は職業の選択が許されない.もっとも,兄のように国王の地位を投げ出すことも不可能ではないが,気まじめな性格ゆえに泣く泣く国王についたジョージ6世.自分に置き換えて考えると,幸いなことに吃音ではないし,世の中への影響がとても大きな状況でスピーチをすることもない.せいぜい,社内あるいは自分が所属する業界内でのスピーチ程度.それでも,自分のイメージ通りに話せなかったりするとかなり落ち込んだりする.そう考えると,主人公のジョージ6世の苦痛は計り知れないものだったと想像する.

イギリス王室あるいは日本の皇室も含めて,我々庶民と異なり,選択の自由もなく王位とか天皇とかに即位せざる得ない人々はなかなか辛い立場にあると,頭の中で理解していることを改めて感じさせられた作品.こういう映画が製作されること,また王室からクレームがつかないということは,英国王室が開かれているとともに,かなり事実に即しているということでしょうね.ジョージ6世の吃音を中心に,そんなことを感じつつ,娯楽作品としても十分に楽しめる良作でした.けれども,個人的には作品賞ぐらいは「ソーシャル・ネットワーク」が受賞しても良かったのにと感じた作品だったかっ・・・

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

タラララ
2011年05月03日 14:10
ジョージ6世って馴染みがないですよね。
自分もエリザベス2世のお父さんという程度の認識です (^^;;
エドワード8世やチャーチルならそれなりに知ってますけど。
なので劇場へは見に行かなかったのですが、娯楽映画ということでDVDになったら見てみようと思います。
しゅー
2011年05月04日 13:46
タラララさん
>ジョージ6世って馴染みがないですよね。
そうですよね.ウィンザー公,マーガレット王女にアン王女,チャールズ&ダイアナ,そして今回のウィリアム王子&キャサリン妃と英国王室は役者が揃っているせいか,ジョージ6世は彼らの影で埋もれた存在でした.本当に,とーっても地味な方だったのでしょう.

作品はとてもよく出来た良作だと思います.けれども,アカデミー賞の主要部門総なめは過大評価のような気がします.もしかしたら,ウィリアム王子&キャサリン妃の結婚に向けてのハリウッドのお祝いだったのかなぁ・・・

この記事へのトラックバック